家族が増えるとき、減るとき

健康保険では、被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行います。この家族のことを「被扶養者」といいます。被扶養者として認定されるためには、「国内居住」のうえ、「家族の範囲」と「収入」について一定の条件を満たしている必要があります。

POINT
  • 被扶養者となるためには、健康保険組合の認定を受けなければなりません。
  • 被扶養者の異動があった場合は、5日以内に届出をしてください。

家族の範囲

被扶養者となれる家族の範囲は、三親等内の親族と決められています。さらに、同居・別居により、条件が異なります。

被扶養者となれる家族の範囲 親等図
  • ※75歳の誕生日当日より後期高齢者医療制度に加入することになりますので、75歳以上の方は被扶養者とはなりません。

収入の基準

被扶養者となるためには、「主として被保険者の収入によって生活していること」が必要で、同居・別居の有無、年間収入により判断されます。

同居している場合 別居している場合
対象者の年収が130万円(60歳以上または障害者は180万円)未満で、被保険者の収入の2分の1未満であること 対象者の年収が130万円(60歳以上または障害者は180万円)未満で、かつ、その額が被保険者からの仕送額より少ないこと

被扶養者の収入範囲

  1. 給与収入(パート・アルバイト・内職を含む)
  2. 各種年金(厚生年金・国民年金・公務員等の共済年金・農業者年金・船員年金・石炭鉱業年金・議員年金・労働者災害補償年金・企業年金・自社年金・障害年金・私的年金・非課税扱いの遺族年金 等)
  3. 恩給収入(文官恩給・旧軍人恩給・旧軍人遺族恩給 等)
  4. 事業収入(自家営業・農業・漁業・林業 等)
  5. 不動産収入・利子収入・投資収入・雑収入
  6. 雇用保険からの給付金(失業給付または傷病手当),健康保険からの傷病手当金や出産手当金
  7. 被保険者以外の者からの仕送り(生計費,養育費 等)
  8. その他継続性のある収入

収入の考え方

被扶養者となる方の収入は、所得金額ではなく、税金控除前の総収入金額(賞与・通勤交通費などの手当てを含む)で判断します。また、必ずしも1月から12月の年収ではなく、将来の1年間の収入見込み金額で判断します。収入が変動する場合には、前年度の収入ではなく、直近の収入により推計することになります。

給与収入とは

毎月の給与(通勤交通費などの手当ても含みます)や賞与など合算した1年間の税金控除前の総支給額をいいます。通常は、前年度の源泉徴収票や所得証明書・非課税証明書などの証明書に記載されている総支給額にあたります。ただし、勤務条件などの変更により証明書記載の収入が今後の収入と異なる場合は、今後1年間の給与収入が推計できる証明書により算出します。

自営業の方について

自営業の方においては、経済的に自立した存在であり、他の者からの収入ではなく、自己の責任と権限のもとで収入を得ることを選択した方ですので、基本的には、ご自身で国民健康保険に加入していただきますようお願い致します。事業コストの支払いより、身近で重要な自分自身の健康保険の加入ができないということは、社会的通念からみて不合理であると考えられます。
しかし、実際の事業内容から得られる収入が十分でなく、自営業の方の収入基準(※)を満たしている場合は被扶養者として認定できる場合もあります。

  • (※)自営業の方の収入基準とは
    自営業(農業・漁業等の従事者を含む)をしている方は、確定申告書などの総収入から、直接的必要経費(注)を差引いた収入額で判断します。所得税法上の所得とは一致せず、確定申告における所得金額がそのまま収入とみなされるわけではありませんのでご注意ください。
  • (注)直接的必要経費(年間総収入から差し引くことができる経費)とは、その費用なしには当該事業が成り立たない経費(例えば、製造業における原材料費、卸小売業における仕入れ代)であり、それ以外の経費(例えば、租税公課、広告宣伝費、接待交際費、福利厚生費、青色申告特別控除額)は、年間総収入から差し引くことはできません。当健康保険組合が認定する「直接的必要経費」については、こちらをご確認ください。

退職金などの一時金について

退職金等の一時的なものは、収入とはみなしません。

生計維持関係

被保険者は、その家族を経済的に主として扶養している事実があることが必要です。

別居家族の場合

「仕送り額」について

該当家族(被扶養者)へ、毎月定期的に基準額以上の金額を仕送りしていることが必要です。
現金手渡しは認めておりませんので、 仕送りの証明できる書類(銀行振込の写し等)が必要です。

仕送り基準額について

仕送り額は、被保険者世帯の生活に無理を強いず、認定対象世帯がそれにより生計を維持されていると認められる金額であることが必要です。また、被扶養者に収入がある場合は、被扶養者の年収より被保険者からの仕送り額が多いことが必要です。

別居であっても以下の場合には仕送りが不要です。

  • 被保険者の単身赴任による別居
  • 学生(全日制)で進学による別居

継続的な扶養能力

被保険者には、継続的にその家族を養う経済的扶養能力があることが必要です。

共働きの場合の扶養

夫婦がともに働いていて子供を扶養する場合、厚生労働省の通知により子供は原則として「年間収入の多い方の被扶養者とする」とされています。複数の子供がいる場合、父母で分けて扶養することは健康保険法で認められていないため、収入の多い方が子供全員を扶養します。夫婦双方の年間収入が同程度(収入の差異が収入が多い方の1割未満)である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とします。

「年収の壁」に対する政府の施策について(2023年10月より)

参考リンク

「年収の壁」とは

「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことです。
健康保険等の被扶養者がパートタイマー等で働き、年収が一定以上になると、被扶養者ではいられなくなり、健康保険や国民健康保険等の被保険者となりますが、そうなると社会保険料の負担が発生して、結果として手取り収入が減少する場合があります。
社会保険における「年収の壁」は、企業規模の違い等により、年収106万円と年収130万円の2つがあります。

(出典:「年収の壁」への当面の対応策(厚生労働省))

年収106万円の壁

従業員51人以上の企業、賃金月額88,000円以上(年収:約106万円以上)等、一定の条件を満たす場合は、社会保険料が発生。

参考リンク
年収130万円(※)の壁 被扶養者の認定基準を満たさなくなるため、条件を問わず、社会保険料が発生。
  • ※60歳以上または障害者は180万円

年収130万円の壁に対する対応

被扶養者認定は前年の課税証明書等の確認で行われていますが、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となる場合は、事業主の証明を添付することにより、収入見込額が130万円以上であっても、引き続き被扶養者の認定を受けることができるようになります。
(同一の者について原則として連続2回までを上限とします)

年収106万円の壁に対する対応

社会保険適用促進手当(※)の支給等、労働者の収入を増加させる支援を行った企業に対して一定期間助成が行われます。

※社会保険適用促進手当

短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合、当該労働者の保険料負担を軽減するために支給することができる手当です。
社会保険適用促進手当は、給与・賞与とは別に支給するものとし、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象に考慮しないこととされます。

  • ※対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の方。
  • ※報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額。
  • ※最大2年間の措置。

被扶養者認定における国内居住要件の追加について

2020年4月より、健康保険の被扶養者認定の要件に、国内居住要件が追加されました。日本国内に住所を有していない場合、2020年4月1日以降は、原則として被扶養者の認定はされません。(海外留学等、一定の例外あり)

国内居住要件の考え方について

住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすものとされます。

  • ※住民票が日本国内にあっても、海外で就労している等、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、国内居住要件を満たさないと判断されます。

国内居住要件の例外

外国に一時的に留学している学生等、海外居住であっても日本国内に生活の基礎があると認められる場合は、例外として国内居住要件を満たすこととされます。

【国内居住要件の例外となる場合】

  • ① 外国において留学をする学生
  • ② 外国に赴任する被保険者に同行する者
  • ③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
  • ④ 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
  • ⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

国内居住者であっても、被扶養者と認められない場合

医療滞在ビザで来日した方、観光・保養を目的としたロングステイビザで来日した方については、国内居住であっても被扶養者として認定されません。

経過措置について

国内居住要件の追加により被扶養者資格を喪失する方が、施行日(2020年4月1日)時点で国内の医療機関に入院している場合、経過措置として、入院期間中は資格が継続されます。

被扶養者資格の見直し

被扶養者資格認定後、健保より定期的または随時、被保険者に対して必要書類等の提出を求めます。
定期または随時の調査の結果、被扶養者資格がないと判定された場合は、被保険者に対しその旨通告し、被扶養者資格が失われたと判定された日に遡って資格喪失となります。
ただし、故意または悪意による虚偽の記載あるいは申し立てがあった場合は、被扶養者資格を付与した日に遡って資格喪失となります。また、当該期間にわたって発生した医療費の全額及びその他給付金を過去に遡及し返還しなくてはなりません。

被扶養者の異動(変更)があったら

結婚や出産等により被扶養者が増えたときや、就職や別居、死亡等で、それまで被扶養者に認定されていた家族が被扶養者の認定基準を満たさなくなった場合は手続きが必要です。なお、当健康保険組合では毎年、被扶養者の資格を確認するための検認を行っています。